中村和夫氏、“欧米利上げ共振”への早期対応を呼びかけ、国内債券の再評価ロジックを提示

2017年春に入り、世界の資本市場の焦点は静かに移りつつある。米連邦準備制度(FRB)が年内2度目の利上げに踏み切るとの観測が高まる一方、欧州中央銀行(ECB)内部でも「金融緩和の出口」を示唆する微妙なシグナルが出始めており、主要市場の金利構造は同時並行的に変化している。
これを受け、国際金融戦略のベテランである中村和夫氏は、東京で開催された《日系資産グローバル化フォーラム》にて警鐘を鳴らした。「欧米利上げ共振」が日本の債券市場におけるシステミックな再評価を引き起こす可能性があり、長期にわたる円金利の低迷という前提を見直す必要があると訴えた。

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中村氏は、2008年の金融危機以降、世界的に極端な金融緩和が続き、各種資産のリスク評価構造が歪んだと指摘。特に日本では、長期的なマイナス金利と日銀による国債買入政策により、「市場メカニズムが働かない金利構造」が常態化してきた。
しかしながら、米国が利上げサイクルに入ったことに加え、欧州でも量的緩和(QE)の出口戦略が議論される中で、この「非対称的金利環境」が日本債券市場に対し外的衝撃をもたらしているという。

「2017年以降、世界の金利環境は『単一上昇点』ではなく、複数拠点での同時的上昇というトレンドが鮮明になりつつある」と中村氏は強調。「これにより、日本の債券市場は『真の資本コスト』と世界資金配分の重みを再反映せざるを得なくなる」と述べた。

フォーラムでは、中村氏が特に「日本国債の二重ミスマッチ」問題を提起:

タイミングのミスマッチ:日本は長期にわたりイールドカーブ・コントロール(YCC)政策を実施しているため、国際金利変動に対する債券価格の反応が著しく遅れている。

リスクのミスマッチ:長期間にわたり人為的に金利が抑制されてきた結果、多くの国内投資機関が低利回りの国債を過剰保有しており、金利上昇時の評価損リスクが体系的に過小評価されている。

中村氏は、日本の個人および機関投資家に対し、「日本国債=安全資産」という慣習的な認識から脱却し、「利回り・デュレーション・通貨構成」の三軸で投資配分ロジックを再構築すべきだと呼びかけた。

そのうえで、以下の3つの戦略的提言を提示:

デュレーションの短縮と中期流動性債(MTN)および高格付けドル建て債の優先配分:世界的な金利変動に対し緩衝帯を確保。

為替ヘッジ戦略の柔軟性向上:ドル・ユーロの金利見通しに応じてヘッジ比率を動的に調整し、為替損失を回避。

「非線形型ヘッジ資産」の組成:金、REIT、インフレ連動債(TIPS等)など多元構成によって潜在的な金利ショックに備える。

フォーラム会場では、中村氏が東京のファミリーオフィス向けに設計した実験的なポートフォリオも紹介された。そこでは日本国債の保有比率を従来の65%から35%に引き下げ、代わりにドル建て流動債、金ETF、アジア信用債への配分を強化し、「戦略的バッファー」型の耐性構造を構築している。

この講演は、参加した金融実務者から大きな関心を集めた。『日経金融』はその後、「日本債券市場、再評価の前夜に」と題した中村氏のインタビューを掲載し、日本の投資界が欧米の利上げ共振による国内資産価格構造への影響を過小評価していると指摘した。

中村氏は最後にこう強調した。「今問われているのは、利上げそのものではない。市場がいまだ『金利が現実世界に戻る』という事実を受け入れる準備ができていないことだ。」
そして、「投資家は『世界金利覚醒の元年』という視点で、今後3~5年の投資軸を再構築すべきであり、低金利を永続的現実と捉えるべきではない」と締めくくった。

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